飛ぶ。咲く。走る。
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花咲かせる春は、これからです。

2014年5月6日   

出国411日目。
32ヵ国目ペルーのクスコにいます。

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サルサを教えてもらったり地元の少年にドライブ連れてってもらったり、
オリャンタイタンボやピサックに行ったり、
ゆるりとすごしながら、そろそろマチュピチュいこうかな、そんな日々。

ゴールデンウィーク中に祖父の命日を迎えて。
あれから3年。昨年と同じ投稿になってしまうけど。

四国八十八箇所巡り中に愛媛県で連絡を受けたのが、3年前。
2年前は小笠原諸島で、昨年はラオスで、今年はペルー。
相変わらず元気でやってるよと、声に出すと、
またそんなとこ行ってるんか、なんて目線をあわさず笑う祖父の顔が、ふと浮かぶ。

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3年前、夜行バスで実家から東京に帰りながら、
裏側にあることから目をそらさないと決めた。

誰かの言葉にもあの人の優しさにもおいしいご飯にも。
悲しい今日にもひとりでいるということにも涙にも。
表があれば、その裏には必ず何かが描かれている。

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僕は不幸なことに花ではなくて、
僕は幸せなことに花ではない。

だから僕はもう祖父には会えなくて、
だから僕はなんとか祖父に会えた。

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そんなことを考えながら、
寝れなくてがむしゃらに書いた日記を、今年もやっぱり読み返す。

**************************


【花して、ほしい】

花咲く春です。

花は、咲いて、受粉して、実をつけて、種を残す。
虫や鳥を介して受粉するから、虫や鳥がよってきてくれるように、きれいに咲く。
こんな感じで、花は次の花を咲かせるためにきれいに咲くのだと、習った。

じいちゃんが畑をしていて、
きゅうりとか、トマトとか、なすとかの、花が咲いて、たぶんちょうどその時に習ったから
小学校高学年の夏くらいかなー。
あーなるほどなと納得しながら、できるだけ多くの花に水をやろうと、腕をのばして水やりしたなー。

なんにせよ、
周りを寄せ付ける為のきれいさなら、もう、まんまと。
ゴールデンウィークに四国を原付でまわってたんやけど
花が、わーって咲いていると、足も止まる、のくりかえし。

不運なことに花じゃない僕は、
まんまと引き寄せることはできなくて、一人やったわけやけど。

一人でぶらぶらしていると、いろんな考えだとか、感情だとかが、整理される。
原付でざーっと走ってると、ふと、かかえてたもやもやとかが、すっと消えていく。
それは、一人でいろいろ考える時間があるから、と思っててんけど、すこし違って。
考える、というよりは、思い出す、作業にあたるのかなと思った。

あーあの時こんなことしたなーとか、あんな会話したなーとか、こんなこと思ったなーとか、
いろいろなことを思い出しているうちに、いつのまにかいろんなことが腑におちていて。
棚に入れるために荷物をほどく、のではなく、棚を片付けて荷物をいれる、ような感覚。

花を見てまず思い出したのは、はじめに書いた畑の風景。
畑に行くぞの合図の代わりにジョウロで水をやる素振りを見せる、口数の少ないじいちゃんらしい伝え方。

それは病院でも健在で、
元気?の問いに、握りこぶしをつくった腕を曲げる。
またね。の一言に、小指をたてた手を差し出す。

あいかわらずやなーって。
口数が少ない84年の生み出した、伝え方。

次に思い出したのは、
表面に鳥の絵が、裏面に鳥かごの絵が描かれていて、
くるくるとまわすと、鳥が鳥かごに入っているように見えるコイン。

咲いて枯れるとか、
笑って泣くとか、
会って別れるとか。

たぶんそれはコインの裏表みたいなもので。
いろいろなコインの裏側には、鳥かごのような絵が描かれていて、
少し指ではじくだけでくるくるとまわり、かごにはいっているような錯覚を、いつでも作り出す。

それでもやっぱり、
枯れる運命を嘆きながら、咲くのでも、
別れを恐れて、出会いに億劫になるのでもなく、
そのコインの裏面に描かれている対価を、受け入れながら、
咲いて笑って会っていきたいと思った。

ここ何年かじいちゃんに会うたび、
「もーいつ死んでもええなー」
「やーまだまだあかんやろ」
の、やりとり。

いつ死んでもええなーと、あれだけ繰り返してたんやから、まーええんやろーけど。

幸運なことに花じゃない僕は、
祖花の咲くうちに芽をだせた。

くるくるとまわったコインが、ゆるやかな動きをへて、ぱたりと表を向いて倒れたとき、
鳥かごが見えなくなるのを、皮肉だと思うほど、悔しくはなかったけれど。

にしても、きちんと東京から帰ってきてる連休中に、旅立つのは、
強がりで寂しがりのじいちゃんらしさがあふれてて笑えた。

てか、平日でも帰るってば。孫もっと信用しろよなー。

「わざわざ東京からくるほどでもないからこんでええ」って言ってたじいちゃんが、
東京からの往復にいくらかかるのかを妹に聞いて病院の棚に3万円いれてくれてたのも、

病院で僕がいるときには「酒のみたいなー」しか言わへんくせに、
僕が帰ったあとでは「いっけいと酒のみたいなー」って母にもらしていたのも、

知ってたのにな。

根元だけに水をやるのが効率的だとは知っているけど、
時にはあのころみたいに腕を伸ばして届かぬ花にも水を。
そのあとで、伸ばした腕をそっと曲げて、元気ですと空に向けて。
ぎゅっと握りしめた拳の中のコインをポケットに送り込んだあと、
目元をぬぐった小指をまた空に。

じーちゃん、僕はまだまだ死ねへんわ。

意地でも。
花咲かせる春は、これからです。
**************************

悲しいときに決心するな。
そんな言葉に真っ向から立ち向かうような、あの時間。

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後悔のない日々を目指しながらも、やっぱりまだまだ不安定。
思い出しながら、思い描きながら、
ジョウロにはいつだって水がはいっていて。

対価を受け入れる強さはまだ持ててないけど、
それでも、欲しいものは欲しいと、わがままを口にすることくらいは僕にもできる。
好き放題に全力疾走。やっぱり咲きたいし笑いたいし会いたい。

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意地でも。
花咲かせる春は、これからです。なんです。