「ド」の音で。
出国221日目。
22カ国目エチオピアのダナキルにいます。
ちはやふる、という競技カルタを題材とした漫画がある。
競技カルタっていうのは、百人一首の上の句を聞いて、下の句のみ書かれた札をとりあう競技。
札は全部で100個しかないので、全てが読まれなくても、数文字だけ聞けば札を穫ることができて、
その文字数によって、一字決まりや二字決まりなんて呼ばれ方もされてるねんけど、
札がどこにあるかの記憶力と音が聞こえてからの瞬発力が試される、そんな競技。そんな漫画。
知らない世界ってのはやっぱり興味があって、面白くて、思わず一気に読みふける。
そんな夜更かしから、一夜明けて、ダナキルツアーへ。
ダナキルは「さらば地球、そして金星よこんにちわ」そんなキャッチフレーズで紹介される、
地球上で最も過酷な場所といわれている場所で、もちろん、ここも知らない世界。ドキドキ。
知らない世界ってのはやっぱり興味があって、面白くて、思わず一気に。
とはいかず、ダナキルツアーは3泊4日でじっくりと。
泊まるところはこんな感じ。夜空ベッド楽しい。
ダロールと呼ばれる溶岩台地。ドキドキ。
塩湖。夕日のタイミングで風が止む素敵。ドキドキ。
世界的にも数少ない恒常的な溶岩湖のあるエルタアレ火山。
夕ご飯後に火山を登って夜中前に火口へ。
煙とか刺激臭とか、そんなことより、ここでもドキドキ。
なんていうか、やっぱり世界は、ドキドキすることであふれていて、
もうこれから先こんなにドキドキすることなんてないんじゃないかな、
なんていう瞬間的な思考を、瞬間的な思考として流すには十分なドキドキが、次から次へと現れて。
そうなってくると今の僕に必要なのは、ドキドキの「ド」の音で動けるかどうか、その瞬発力なんだろうなと思う。
百人一首じゃないけれど、聞こえてくる音の中から、ドキドキする音に反応したい。
もちろん、そのあとドキドキ、と続くかどうかはわからないんだけれど。
それでも、やっぱり動きたいな。
早い者勝ちではないんだけど、それでも、はやく穫りたい。瞬発力が欲しい。
どの音も、ドの音に聞こえる毎日はやっぱり楽しくて。
たくさん並んだ札の前に正座して、次に読まれる札に耳をすます。
好きな歌が詠まれるかもしれない。次に聞こえてくるのはまだ聞いたことのない音かもしれない。
そんな時間がすごく好き。
そんな時間が流れる今がすごく好き。
めまぐるしくドキドキの押し寄せる毎日の中で、
ようやく出会えたドキドキがいつのまにかなくなってしまっていたりすることだってあって。
なんていうかそれは、まるで雲に隠れてしまう月のようで。
みたいな歌も、百人一首にはあって。
めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな / 紫式部
これも一字決まり。
音が聞こえたなら、動けばいい。