ポケットの中の手を。
出国313日目。
31カ国目の南アフリカのケープタウンにいます。
ケープタウンの便利さと自然のバランスに驚きながら。
ワイナリーでお洒落にワインを飲んだり。
テーブルマウンテンに登ったり。
ペンギンを見たり。
バイクでびゅびゅんと走ったり。
喜望峰についたときはやっぱりちょっと嬉しかったな。
ここ南アフリカからは、南十字星をみることができて。
この南十字星は、銀河鉄道の夜でジョバンニとカンパネルラが旅したその終着駅。
彼らはこの駅で「ほんとうのみんなのさいわい」について考えた。
では、僕は。と思う。
アフリカ縦断のその終着駅の南アフリカにいる僕は、何を考えるのか。
アフリカ縦断、4ヶ月、11カ国、10000km。
もちろん縦断中にここに辿り着いた瞬間を想像していなかったわけもなくて、
もしかしたら何かすごいことを思いつくんじゃないかな、なんて期待だって少しはしていて。
でも結局は、アフリカ楽しかったなー。みたいな、
なんでもないありふれた感想を、せめてもと大声で叫ぶよな、そんなアフリカ縦断の終着駅。
誰の幸せを願うでも、自分の夢を大きく広げるでもなく。
奇想天外なアイデアが浮かぶわけでも、この先何度も思い返したくなるよな言葉を見つけるでもなく。
そこに立てば何か見えると思っていた場所に、なるほどこんなもんかとすこし立ち尽くして。
高くあげた両手をまたポケットに戻した後に、またどこかへ歩きだすような。
きっとどこかで満足しながら、もう片方では悔しくもあって、
だからポケットに戻したその手はぎゅっと握りしめられていて。
なんていうか、そんくらいのもんでしかないのかなって、思った。
そして、きっとそれで十分なんやろなって、思った。
悲しいときに笑える強さなんてなくて、人目はばからずどーんて沈むし、
嬉しい時ははしゃいで、でも余裕はあるくせになかなか誰かの哀しみには気づけなくて。
不完全さは結局今も、不完全なままで。
いつかは、と願いながら、まあでも、と逃げ道を残す。このへんもやっぱり。
それでも、というか、だからこそ、になるのかな。
アフリカ縦断してよかったなと思った。ほんとにいいとこやったな。
そしていよいよ次は中南米。こっちもめっちゃ楽しみ。
僕が辿り着く着かないに関係なく沈む夕日を見て、
振り返って伸びる陰が自分のものだと確信する。
ポケットの中の手をさらにぎゅっと握りしめたのは、
いつだってファイティングポーズをとれるように。
諦める気なんてさらさらなくて。
まだまだ、続く。続けてく。