飛ぶ。咲く。走る。
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靴でもネクタイでもクワガタでもサイでもなく。

2013年8月6日

出国128日目
10カ国目のイスラエルのエルサレムにいます。

バンクシーという芸術家がいるらしくて。
社会風刺的グラフィティアート、ストリートアートを世界各地にゲリラ的に描くという手法を取る、
ロンドンを中心に活動する覆面芸術家。みたい。
そのバンクシーの作品があるベツレヘムという町までここエルサレムからバスで1時間くらいという噂を聞いて、
覆面芸術家って、なにそれモテそう。くらいの気持ちでむかうことに。

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手榴弾ではなく花束を投げる兵士。

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兵士の持ち物検査をする少女。

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パレスチナの分離壁に書かれているのは、壁を倒すクワガタ。

すごい。

ちなみにこのクワガタの絵が描かれている分離壁は、
イスラエルがパレスチナの自爆テロを防ぐためにみたいな理由で建設してるねんけど、
国際司法裁判所はこの壁の建設をパレスチナ人への不当な差別にあたるので違法としていて、
国連総会でも建設に対する非難決議がなされている、そういう壁。

実際のところ、この壁は、、、
みたいな話をするにはあまりにも付け焼き刃すぎる知識しかないし、
バンクシーの絵を目的に来た先で、その存在を知ったくらいの僕が言うのもあれやねんけど、
実際に分離壁をみて思ったのは、
うん、なんとかこの壁なくせへんかな。

あまりにも圧倒的で、無表情で、冷たさすら感じない、
なんなら尊厳という錯覚すら見てしまいそうになる。
壁だから当たり前なんだけど、向こう側が、見えない。

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いろいろな声がそこには書かれていて。

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突進して壁を壊すサイ。

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FRAGILE。ほんとにそうであればいい。

壁沿いを歩きながら、ふと、安部公房の「壁」思い出した。

名前をなくした「ぼく」が事件に巻き込まれ、
名刺が「ぼく」のふりをして仕事をし、靴やネクタイが動き出し、恋に落ちた相手はよく見たらマネキンの人形。
最後「ぼく」は果てしなく成長していく壁となっていく。
ほとんど覚えてないけどそんなストーリー。
人間と物質の入れ替わりを通して、実態とは肩書きとはそんな問いを投げかけているようなそんな本。なのかな。

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パレスチナの分離壁が「ぼく」であれば、彼には何が見えているのだろうか。
自らの存在が裁判にかけられ、自らの存在を否定するようなメッセージを描かれ、観光客にカメラを向けられ、、
怒りを反感を憎しみを受け止めながら、それでもなお無表情で佇めるのは、やはり壁が壁でしかないからなのだろうか。

安部公房はあとがきで
「壁がいかに人間を絶望させるかというより、壁がいかに人間の精神のよき運動となることを示すのが目的でした。」
そんなことを書いている。

この壁の向こう側から花束が投げ込まれるような、この壁が倒されるような壊されるような、
そんな人間の精神のよき運動となるような未来を語るのは、
靴でもネクタイでもクワガタでもサイでもなく、僕たち人間でしかない。

僕はこの壁の向こう側を、見たい。

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