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もしかしなくても。
出国129日目
10カ国目のイスラエルのエルサレムにいます。
朝からエルサレムをぶらりと。
エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、どの信者にとっても聖地。
ユダヤ教徒は嘆きの壁の前で聖書を読み、
キリスト教徒はイエスが十字架を背負ってあるいた道を巡礼し、
イスラム教徒がアルアクサー寺院でメッカに向かって祈る。
それが全部旧市街にぎゅぎゅっとある、そんなところ。
町並みの空気感にそっと緊張感があるのもきっとそういう背景があるからで。
旧市街をわーなんか雰囲気あっていいなーと歩くのも、新市街でわーきれーとはしゃぐのも、楽しい。
昼過ぎに宿に戻り、イブラヒムおじいさんに誘ってもらい、平和会議なるものへ。
「これってなんの集まりですか?」の問いに、
「いろいろな宗教の人がいて、そのいろいろな宗教の人がいっぱい集まって平和について話す会議だよ」と。
なにそのめっちゃ平和な会議。
すこし広い家についてみんなでわいわい話して、あれ会議ってこんな感じなんや、と思ったくらいで、
「屋上にご飯があるからみんなで食べよう!」の声が。
え?屋上?みたいなキョロキョロ感と共に言われるがままに屋上へ。
そのあとは屋上で夕日見てご飯食べて、ゆるっとしたホームパーティーの様な空気の中、
円になって座って、何人かがが平和についてしゃべって(アラビア語がまったくわからないからここは僕の大予想)、
楽器とかひいて、最後はみんなで手をつないで歌って。
すごくすごくすごく、感動した。
僕は特に宗教みたいなものはないから、それがどのくらいすごいことかは想像できないんだけど、
それでも、そのとき僕がすごい空間にいることができたのは間違いなかった。
それくらい優しい空気で、綺麗な色合いの雰囲気で、それくらい美味しいご飯やった。
平和すごいやん。
きっとみんな平和をもとめていて。
昨日パレスチナの分離壁をみたときは、
もうこれって、恐ろしく強大な何か、それこそ神様的な力がないとどうにもならなくて、
今の僕にできることなんてないのかな、なんて気がしてたけど、
もしかして、そんなことないんじゃないかなって思った。
みんなでおいしいご飯を食べて手をつないで歌う。
もしかして、こういうことでどうにかなっちゃうんじゃないかななんて。
パーティーの最後にでてきたスイカを頬張りながら、
つよくつよくつよく、思った。
うん。ほんと。
みんなでおいしいご飯を食べて手をつないで歌う。
もしかしなくても、こういうことでどうにかしてやりたい。
靴でもネクタイでもクワガタでもサイでもなく。
出国128日目
10カ国目のイスラエルのエルサレムにいます。
バンクシーという芸術家がいるらしくて。
社会風刺的グラフィティアート、ストリートアートを世界各地にゲリラ的に描くという手法を取る、
ロンドンを中心に活動する覆面芸術家。みたい。
そのバンクシーの作品があるベツレヘムという町までここエルサレムからバスで1時間くらいという噂を聞いて、
覆面芸術家って、なにそれモテそう。くらいの気持ちでむかうことに。
手榴弾ではなく花束を投げる兵士。
兵士の持ち物検査をする少女。
パレスチナの分離壁に書かれているのは、壁を倒すクワガタ。
すごい。
ちなみにこのクワガタの絵が描かれている分離壁は、
イスラエルがパレスチナの自爆テロを防ぐためにみたいな理由で建設してるねんけど、
国際司法裁判所はこの壁の建設をパレスチナ人への不当な差別にあたるので違法としていて、
国連総会でも建設に対する非難決議がなされている、そういう壁。
実際のところ、この壁は、、、
みたいな話をするにはあまりにも付け焼き刃すぎる知識しかないし、
バンクシーの絵を目的に来た先で、その存在を知ったくらいの僕が言うのもあれやねんけど、
実際に分離壁をみて思ったのは、
うん、なんとかこの壁なくせへんかな。
あまりにも圧倒的で、無表情で、冷たさすら感じない、
なんなら尊厳という錯覚すら見てしまいそうになる。
壁だから当たり前なんだけど、向こう側が、見えない。
いろいろな声がそこには書かれていて。
突進して壁を壊すサイ。
FRAGILE。ほんとにそうであればいい。
壁沿いを歩きながら、ふと、安部公房の「壁」思い出した。
名前をなくした「ぼく」が事件に巻き込まれ、
名刺が「ぼく」のふりをして仕事をし、靴やネクタイが動き出し、恋に落ちた相手はよく見たらマネキンの人形。
最後「ぼく」は果てしなく成長していく壁となっていく。
ほとんど覚えてないけどそんなストーリー。
人間と物質の入れ替わりを通して、実態とは肩書きとはそんな問いを投げかけているようなそんな本。なのかな。
パレスチナの分離壁が「ぼく」であれば、彼には何が見えているのだろうか。
自らの存在が裁判にかけられ、自らの存在を否定するようなメッセージを描かれ、観光客にカメラを向けられ、、
怒りを反感を憎しみを受け止めながら、それでもなお無表情で佇めるのは、やはり壁が壁でしかないからなのだろうか。
安部公房はあとがきで
「壁がいかに人間を絶望させるかというより、壁がいかに人間の精神のよき運動となることを示すのが目的でした。」
そんなことを書いている。
この壁の向こう側から花束が投げ込まれるような、この壁が倒されるような壊されるような、
そんな人間の精神のよき運動となるような未来を語るのは、
靴でもネクタイでもクワガタでもサイでもなく、僕たち人間でしかない。
僕はこの壁の向こう側を、見たい。
「Welcome!!」と「Eat!!」
出国127日目
10カ国目のイスラエルのエルサレムにいます。
イスラエルは地中海に面した中東の国で、、えっと、、、
と、ここでキーボードを打つ手がとまるのは知っていて。
いつも通り、ここでようやく検索する、宿にある地球の歩き方を読む。
いろんな宗教、民族がだーっていて、分離壁等のパレスチナ問題を抱えてるところ。
そうかそうか、パスポートにイスラエルの出入国スタンプがあるだけで入国拒否をする国があるくらいやもんな。
物価もとんでもなく高くて、コーラの350ml缶が200-300円くらいする。
今回、そんなイスラエルに来たのは、
イブラヒムおじいさんという人に会いたかったから。
イブラヒムおじいさんは、エルサレムに家があって、
その家には誰でも泊まってよくてご飯もめっちゃででてきて、
宿っていう形式ではなくて、宿泊者の寄付によって運営されてるみたいなところのご主人。
僕も噂でゆるっと知ってるだけねんけど。
口癖は「Welcome!!」と「Eat!!」、めっちゃお茶目で優しくてすごい人。
聞けば聞くほどに魅力的で。気になってしょうがなくて。
家の場所はオリーブの丘にある、以外の情報はなかったけど、
そのに向かうバスに乗れば、もうみんながその家を知っている。
そんなところ、そんな人。
と、いうわけで、訪問することに。
ヨルダンを朝に出て昼過ぎには着いた。
イブラヒムおじいさん、どん。
笑顔素敵すぎるし、面白いし、すごい。
噂通り、「Welcome!!」と「Eat!!」の連発。素敵すぎる。
「一番いけないのは、お腹が空いていることと、 一人でいることだから。」
そんな映画サマーウォーズを思い起こさせるような、振る舞い、もてなし。
そら人も集まるわ。
旅行者だけじゃなく、いろんな人がこの家には集まって。
町をあるけば、イブラヒムおじいさんはみんなに声をかけて、声をかけられて。
あれ、この国ってこんなとこなんやっけ?本で読んだのと違う、検索したのと違う。そんな気持ちになる。
もちろん僕が見たのはほんの超一側面だけだけど、
そういう側面があるということは、検索窓に「イスラエル」を入力するだけではでてこなくて。
ふと、小学校の時の道徳の授業を思い出した。
先生が黒板を4つにわけて、世の中の物事は4つにわけれますよ、みたいな話をはじめて。
授業中に寝るという選択肢を知らなかった小学校3年生の僕は、ふんふんと聞いてたんやけど。
自分もみんなも知っていること。
みんなは知っているけど自分は知らないこと。
自分は知っているけどみんなは知らないこと。
自分もみんなも知らないこと。
この4つです、と、チョークを走らせて。
なんかずるいなーと思いながら、
でもなんとなく、すごいことを聞いた気がしてどきどきした。
今僕はいろいろな国をまわっていて。
いろいろな国で見たり聞いたりしながら、読んだり調べたりしたことを確認したり違和感を感じたりしている。
この国は〇〇です。
そんなふうに句点一つで表すことができるような国なんて歴史なんて人なんてあるわけなくて。
調べたり聞いたりした世界に、自分の目で見た世界を重ね塗る。
もちろん、それでもまだまだ足りないんだけれど。
なんていうか。
多くの文章を読みながら、一冊の本を読み進める。
文字を追いながらも、行間に目を凝らす。
そんな日々なんだろうな、なんて思いながらぼんやりとソファに腰をおろす。
そんなとき、声がかかる。
振り返るとイブラヒムおじいさん。
「Welcome!!Eat!!」
この言葉でこんなにも幸せな気持ちになることを、
今の僕はもう知っている。