6088m登頂。モノクロでカラフル。
出国382日目。
32ヵ国目ボリビアのラパスにいます。
6088mの雪山登山。
ワイナポトシに登ってきました。
はじめに断っておくと、
僕は、山登りが好きなわけではなくて。
一応、富士山は登ったことあるけど、くらいの感じで生きてきて、
なにがどうなったか、キリマンジャロに挑戦したのが去年の12月。
吐きそうな思いをしながら登った、
その山頂にはこれまでに味わったことのない達成感があったけど、
それでもだからといって、これからも登山していこう、なんて思った訳ではなくて。
でも、やっぱり、ワイナポトシは登らないといけない気がして。
もちろん、6000m越えにわくわくしたからってのはひとつの理由ねんけど、なんていうか。
「積み上げてきたもので
勝負しても勝てねぇよ
積み上げてきたものと
勝負しなきゃ勝てねえよ」
オールドルーキー / 竹原ピストル
どっちかっていうと、こっちの理由のほうが大きいかな。
キリマンジャロに登ったことでなんか満足してる自分がいて、
たいして山のことも知らないくせに、
5895m、アフリカ大陸最高峰登ったからもういやろみたいな、
そんな甘えた思考を、バシンと叩くのが、きっと今の僕の役目。
「これまで」を越えれないような「これから」はやっぱり面白くないと思うねんな。
と、いうわけで、
2泊3日でのワイナポトシへのチャレンジ。
1日目は氷河の上で、
アイゼン(靴の裏につける針みたいなやつ)の付け方、歩き方。
ピッケル(氷に刺さすつるはしみたいなやつ)をつかった雪壁の登り方とかの練習。
アイゼンはまだわかるとして、ピッケルを使った雪壁登る練習ってなに。どんなとこいくの。
みたいな不安をみんな口には出さず、夜は暖炉を囲んでおしゃべりおしゃべり。
2日目は昼過ぎにコテージ(4700m)をでてベースキャンプ(5300m)まで岩山登山。
この時点では、まだウクレレを弾けるくらい元気。
夕食時にキリマンジャロの時と同じように、登頂アタックの説明を受ける。
今から仮眠をとって、夜中1時くらいに出発ね。
ガイドひとりにつき2人がザイルで繋がって歩くよ。
そうそう、寒さの対策しっかりね。
みたいなそんな感じ。
で、いよいよ。
am1:00 5300m
出発。
月明かりで光る雪山はやっぱりきれいで、
アイゼンのおかげで一歩一歩しっかり進める。
一度経験したことのある高さっていうのもあって、落ち着いたスタート。
やっぱり何でも経験しておくって大事やなーと思いながら、
この時はこれから向かう6088mの高さにただただわくわくしてた。
am3:00 5600m
しんどいしんどいしんどい。
順調なスタートから一転、これまでに味わった頃のないくらいの頭痛と吐き気を振り切るように歩く。
あれ、キリマンジャロんときってこんなしんどかったっけって思いながら、
しんどいって口に出しても白い息となって消えてくだけって事に気づいて、
もうこうなったら、比べるのも嘆くのもやめて、現状をどんと受け入れる作戦に変更。
6088mまで登らな終わらへんってことだけは間違いなくて、
ここで諦める気もさらさらないってことを自分の中で確認した後は、
水を飲んで、深呼吸して、目の前の景色にだけ意識を集中させる。
しんどいのも、頭痛いのも、吐きそうなのも、全部どんと背負い込んで歩く、そんな時間帯。
モハメッド・アリの言葉をかりるなら、
「わざとボディを打たせるんだ。打たせたボディは痛くない。」そんな感じ。
am4:30 5800m
ふと体が軽くなる。
雪山に体がなれてきたのか、全部を背負い込む作戦が成功したのかはわからないけど、
まだまだ歩ける、なんなら走れる、そんな気分になって。
この感じが続けばきっと登頂できるんやろなって思って、それがまた力になる、そんなプラスの流れにストンと乗り込む。
月がきれいで、その月に照らされる雪面に、アイゼンの音と自分の呼吸が溶けていく。
いろんなものを吸収しながら、それでも白く輝く雪のすごさに、すこし憧れる。
am5:30 6000m
山頂まで100mをきったくらいから、一歩一歩が、また重くなりだす。やっぱり6000mは手強い。
もうすこしゆっくり、と思っても、今回は3人がザイルで繋がっている状態。
しかたなく、無理してスピードをあわせて歩く、そんな時間帯。
と、ここで気づいたのは、思ってたより辛くない、っていうこと。
ゆっくり歩けば進める、これはキリマンジャロの経験から知っていること。
でも、自分が思うゆっくりよりも少し早い今のスピードでも、問題がなさそうで。
無理をするのがいいこと、ってわけではないけど、
それでも、自分でひいている勝手な限界線は、大抵手前にあることを再確認。
am6:00 6088m
最後の100mくらいは、ほんとに人ひとりがぎりぎり歩けるような幅の道。
もうこの時は、疲れたとか頭が痛いとか吐きそうとかそんな感情はどこかへいってしまっていて、
ただただ足元を、その両サイドの崖を、前を歩くパートナーを、その先にみえる山頂を、
順番に見ながら歩いていた。
6088mに辿り着くまで終わらない、と思いながら歩いていた時間帯から3時間。
一秒でも早く辿り着きたいけれど、もう少し続いてもいいなと思う気持ちもあって。
簡単に終わらせるにはもったいないような、景色と感情。
せめてもと目に焼き付けながら、心に染み渡らせながら、歩く。
そして、登頂。6088m。
気がつけば両腕は空に伸びて、ガッツポーズ。パートナーとガイドとハイタッチ。
やっぱりこの瞬間はたまらなく好き。
登ってよかった。
山が好きってこういうことか、ってのが少し分かったかもしれない。
ってのは、キリマンジャロのときと同じ結論。
でもほんとうに登ってよかった。
もう一度言っておくと、
僕は、山登りが好きなわけではない。
しんどいの苦手やし。登ったら降りなあかんし。
それでもやっぱり、あの山頂での感覚はたまらなく大好き。
あの景色も、あの感情も、思い出しただけですこし震える。
音が消える雪山を、色が消える夜に登る。
なにも聞こえなくてなにも見えなくて、
だからこそ、そこにある世界はきれいな和音のように広がる。
雪山登山はやっぱり、モノクロでカラフル。
さてさて、5895m に続いて6088mも登頂成功。
もちろん、調子に乗る気なんてさらさらないけど。
越えれるもんなら越えてみろよ、と、これからの僕を見る。
「これから」に簡単に越えれるような「これまで」を積み重ねてるつもりはないから。
楽しみが、またひとつ増える。
負けるなよー、これからの僕。